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犬のおまわりさん

 前回書いた超前向きで優しい小学校2年生の女の子のレッスンでのこと。

 「先生、『犬のおまわりさん』って知ってる?」ときた。もちろん「知ってるよ」と答えたら、「あのね、あの曲って、いつも不思議なことがあるんだよ。」と言う。
 
 「まいごの子ねこちゃんは、お母さんに会えたのかな?私、いつもすごく気になっちゃうんだよね。先生、知ってる?」

 こういう場合、どう答えたらいいんでしょうか?私は、「う〜ん、はっきりわからないけれど、たぶんちゃんとお母さんのところに帰れたんじゃないかな?」と答えるのが精一杯でした。

 はっきり言って、勉強がものすごく得意ってわけじゃないと思われる女の子、だけど、この子は絶対に本当にきれいな子どもらしい心を持っている。
 レッスンでも、私が黙っていても「ここ、ちょっと弾けなかったけど、もう一回だけ弾いていい?」「お願い、もう1回だけ!」と言いながら、何度も何度もやり直す。あわてずに、一緒に進んでいこうね。
 
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場面かんもく症

 私の生徒さんは、たいがいの場合とてもおしゃべりである。お家のこと、友だちのこと、幼稚園・学校のこと、ほっておくといつまでもいつまでも話している。「わかったから、まずはおけいこしましょう。」と言うことしばしば。

 だが、ときどき「オトナと話すのが苦手」な子どももいる。

 幼稚園の年中からおけいこに来ている女の子Aちゃん。幼稚園のあいだは、毎回40分のレッスン中一言もしゃべらなかった。音の名前を聞くと、ピアノで弾くか、やおら私が持っているペンを取ってどこかに書き付ける。ソルフェージュの教材も、毎回「歌ってみましょう」と声をかけても、黙ってピアノで弾くだけ。黙って指示通り動くときはともかく、いやだったら首を振るし、字が書けるようになったら楽譜でもどこでも「やりません」を書いた。楽譜のいたるところ、やりませんの嵐。こうしたい、と思ったときも、すべて筆談。決して練習してこないわけではない。むしろ、幼いわりにはがんばっているほう。けれど、全く声を出さないというのはずっと続いていた。

 そのAちゃんが小学生になって、グループソルフェージュに参加し始めた。最初はお母さんが心配で横で見ていらした。楽語の神経衰弱でカードが取れなくて、涙がちょちょぎっていた。
 でも、一緒のクラスにいる1年上のお姉さんが、顔を見るたびに話しかける。返事をするとかしないとかお構いなしにどんどん近寄って、思ったことをしゃべり続けた。最初は黙っていたAちゃんが、返事をするようになり、一緒に笑い合ったりするようになった。ソルフェージュなら、みんなと一緒に歌ったりできた。そうなってみると、聴音などはグループの中で一番しっかりわかったりする。

 少しずつ気持ちがほぐれたのか、レッスンでもソルフェージュ教材を歌ったり、返事ができるようになった。やりたくないときも、「やりません」と書かずに「いやです。」と言えるようになった(とほほ、だけれどだいじなことです)。最近は、学校であったことなんかも、自分から話してくれたりする。

 もちろん、大きくなって成長したのもあるだろうが、グループソルフェージュで一緒のお姉さんのチカラが偉大だったと思う。その子はたまたまピアノを始めたのが遅くて、自分の年齢のクラスだと少々キビシいかなという感じなのである。でも、お母さんが「わからなくて困るより、同じくらいの進度のお友だちと一緒のほうが楽しいよ。」と言ったら、すごく素直に納得して、機嫌よく参加してくれている。悪びれず、周りの子にいろいろ話しかけながら、楽しく授業を受けている。本当にかわいらしい2年生である。

 学校や公の場でおとなと話せない症状に『場面かんもく症』というのがあるとTVで知った。おそらく、Aちゃんは重症ではないが『場面かんもく症』の兆候があったと思う。反抗的でもないし、いやがっているようでもないのに(やりません、とは書くけれど)、全く話せない。自分でも困っていたのかなとも思う。

 子どもの心に、子どもが寄り添う。オトナにはできないことを、いとも簡単にやってのけた、子どものチカラに脱帽。

 
プロフィール

しおん

  • Author:しおん
  • 4人の子どものうち、1人は結婚し孫もできました。まだまだ子育ては続きますが、日々格闘しながら、ピアノと向かう毎日。大好きな本のこと、ベランダの緑、趣味の手芸もご報告していこうと思っています。
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